通学路をなくした

久し振りに外の匂いを嗅ぐ。

夜道をだらしのない仕草で歩いた。

嘗ての通学路だった道。

学校で恐怖心を煽られる夢ばかり見ているのに、

この一帯は舞台にならない、そんなことに気が付いた。

 

通学路は愉しかった。同じ道でもその日によって、

草むらに入ったり、黒いブロックだけを踏むようにしたり、

わざとらしく深く曲がってみたりしていた。

夏休みには小学校のプールへ通うだけの道になる。

大雨に降られた時には点在する街路樹の下で、友達と、

枝の間から空を覗き見ていた。草とアスファルトの匂いがとても近かった。

 

今夜も湿気のせいで空気が匂った。

懐かしい、でも違っている。こんなにあからさまではなかった。

思い出をきいていると過剰になぞられるのかもしれない。

 

世界はいつも新しくて、僕はそこから遅れていく。

そうやって古くなっていくこと。

なくしたものを透かして見ること。