初めて、フルネームで書くよ

もっと気の利いた話をしたためた手紙があった。

いつそれを、宛名を添えないで公表しようかと考えていた。

なのにこんなことを初めに選んでしまって、ごめんなさい。

ごめんなさい。

 

藤原基央さん。

貴方が言っていた、誰かが生きたいと願っていた誰かの明日と、

俺が生きたくないと思ってしまう俺の明日は、同じではないと思ってしまうよ。

貴方の歌声を聴くのが凄く辛い。

響いて来なくなってしまった俺を感じてしまって、痛い。

信じて使っていた薬の効能が消えてなくなってしまったようだ。

それがここずっと、かれこれ7年近くは続いている。

けれど心に穴を空けて、そこから吸い上げていくと、

まるで何かを諦めたかのように、すんなりと入ってくる。

でも、これはあの頃の心地良さなんかじゃない。

貴方の唄しかなかった頃のものではない。

 

貴方の唄に共感を喪った俺はもう人ではないのかもしれない。

だって足りないんだ。

俺の中の激情はきっと貴方を超えてしまった。

もう分かり合えない。そんな今日を、受け容れなくちゃいけない。

 

自分の唄を作れるようにならなくちゃ。

いや、作ってはいるんだけど、

それを譜面に起こして、弾けるようにならなくちゃ。

何を差し置いても。だとしたら。

だとしたら俺には捨てなくちゃならないものがある。

どうしよう。約束だったのに。また裏切ってしまうのかな。

また自分が嫌になってしまう。

 

初めての手紙だったのに、何を書いているんだろう。